19 時から高知 蔦屋書店主催の「蔦ノ葉読書会」に参加。
読書とは、本の中の他者との対話です。
蔦ノ葉が広がるように、本を読むことが、”好き”という気持ちを広げたいという想いと、
“本を読む”という行為が種となり、蔦ノ葉が生い茂るように様々な英知を広げ人と人との繋がりをつくりたい。
そんな想いで蔦屋書店のスタッフが読書会を開催致します。
月イチ開催の読書会で、私は去年 11 月から、ほぼ毎月参加。
蔦ノ葉読書会について
読書会のスタイル、て多種多様だと思うのですが、例えば、本を 1 冊決めて輪読したり、あるいは本を決めるまでではないにしても何かテーマを決めたりとか。
私も昔は、カントの読書会とか、三木清の読書会とかに参加していたのですが、蔦ノ葉読書会は「自分のオススメ本を紹介」ということで、けっこう自由な感じで、持ち寄った本に関するトピックをざっくばらんに話す、みたいな。そういう知的会話への欲求が満たされる会ですね。私にとっては。
地方都市に住んでいるとなかなか、小難しい話を「うんうん」て聴いてくれる人とか、逆に小難しい話を「うんうん」と聴く側に回ったりとか、そういう機会が少ないのですが、蔦ノ葉読書会はそういったことが可能で、私としては楽しい会。
もちろん、文芸書も紹介されるので、小説好も参加しやすいと思います。
今回の読書会のテーマは「2024年 私のイチオシ本」「2025年の読書の野望」ということで、私は 3 冊、本を持っていきました。
シュー、ガーチャー『女の子ための西洋哲学入門』
まずは「2025 年読書の野望」て、「野望」てほどでもないのですが、最近買った、シュー、ガーチャー(編)『女の子ための西洋哲学入門』(フィルムアート社、2024)。
なぜこの本なのかというと、まだ読んでないからで、しかもけっこう厚いので、年末年始読書にちょうど良いかな、ということで、「2025 年読書の野望」の一冊として選びました。「野望」とはけっこうズレてますが。
ちなみどういう内容なのかさわりだけ紹介すると、哲学史はやはり、メインは男性、それも白人男性で、異性愛者によって展開されてきたもので、そういう点では、偏りがかなりあるだろう、と。その偏りを解消するためには、「男性・白人・異性愛者」とは別の仕方の思考が求められるのですが、別の仕方の 1 つが、女性による哲学。
「女性による哲学」というと、これも以前、高知 蔦屋書店の読書会で紹介したのですが、バクストン、ホワイティング『哲学の女王たち』(晶文社)がありますね。『哲学の女王たち』は、歴史上の女性哲学者を紹介した本なのですが、『女の子ための西洋哲学入門』は、現代の女性哲学研究者による、哲学入門書。
たとえば、存在とか、認識とか、正義とか、美とか、そういう、哲学の入門のトピックを、女性研究者が解説している、という内容。
しかも翻訳者も、日本の女性哲学研究者。
ということで、私が慣れ親しんだ哲学入門書とは「別の仕方」の思考に触れる機会なのではないかと思い、購入。これから読もうと思います。
エリック・ホッファー『大衆運動』
つづいてのテーマ「2024年 私のイチオシ本」で選んだのが、エリック・ホッファー『大衆運動』(2022)。
この本はまさに、いま、読むべき本だな、いまの時代を解き明かすのにぴったりな一冊だな、ということで紹介。
エリック・ホッファーは先月の読書会でも紹介しましたね。
今年もいろいろ、日本国内でも選挙があって、アメリカでもトランプ前大統領が次期大統領として当選したりとか。日本国内の選挙では、いままで性善説で成立していた選挙の在り方がけっこう矢面に立たされているのではないか、とか。そういうのが話題になった 1 年だったな、と。
そういう 2024 年を振り返るのに、1951 年の本が役に立つのではないか、ということで、エリック・ホッファーを紹介しました。
デリダ『アデュー』
そしてもう 1 冊。今月のオススメとしても、2024 年のイチオシ本としても紹介したのが、デリダ『アデュー』。今年、2024 年に出た岩波文庫版ですね。
デリダ没後 20 年という区切りイヤーに文庫化された『アデュー』は、デリダの盟友でもあったレヴィナスが亡くなったときの追悼がもとになった一冊。
レヴィナスの思想、特に、やはり「死とは何か」を中心に、レヴィナスの思想をデリダが解釈する、という内容。
西洋哲学では歴史的に、プラトンからハイデガーまで死とは何か、が論じられてきたわけですが、例えば観照としてだったり、無としてだったり。
デリダによると、レヴィナスにおいては、そういった歴史的な言説を撹乱するように、死とは「答えないこと」なのだ、と。
これを読んだときに私ははっとさせられて、自分が存在しなくなるというより、あなたが答えなくなることの方が、根本的な「死」だな、と思いさせられ、こういう発想にいきつくことが現象学の醍醐味だし、こういう論点を 1 つ 1 つ整理していくと、存在よりも倫理の方が先行するのだな、と妙に納得したりするわけです。
で、なぜこれを「今月のオススメ」として選んだのかというと、来月から、読書会に出られなくなるから。
「アデュー」というわけではもちろんありませんが、岩波文庫版の帯にあるように「さらば、友よ」、ということで、約 1 年間、ありがとうございました。
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